1、平成22年度の調査では、下記の事項を確認した。 (1)シャンフルーリ著『陶磁器文献目録』(1881)に関する調査 1872年3月のセーヴル製造所着任直後からシャンフルーリは、陶磁器関連文献の調査・収集に励んだ。その成果をまとめた『陶磁器文献目録』(1881)には、16世紀から19世紀までの世界各国の陶磁器に関する文献の情報が記されている。同書の序文でシャンフルーリが、一般的な文献目録には陶磁器に関する情報が欠如している点、また当時重版されたオーギュスト・ドゥマン(Auguste DEMMIN)の陶磁器ガイドブックに不備が多い点を指摘しながら、豊富な情報(モノグラフィー等の発行部数の少ない資料を含む)を有し、研究者へ配慮した編集方針に基づいて執筆された自著『陶磁器文献目録』の有用性を謳っているように、同書は当時において画期的な書物であった。 (2)「シャンフルーリ関連資料」(セーヴル国立製造所資料館所蔵)の調査 1872年から1889年にかけてセーヴルで本格的な陶磁研究に励んだシャンフルーリは、その業務の中で、同僚やウジェーヌ・ピオ(Eugene Piot)をはじめとする内外の多くの陶磁研究者と交流しながら知見を深めた。 (3)セーヴル国立陶磁博物館の所蔵品目録の調査 セーヴル国立陶磁博物館にまとまった数の日本陶磁器が入るのは1878年パリ万博以降のことだが、それ以前にも日本陶磁器が購入・寄贈された事例がある。1886年6月10日には、パリで活躍した美術商の林忠正が同館を訪れ、所蔵されている日本陶磁器に関する情報(産地・製作年代等)を提供している。
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