文人画の基礎研究としてのデータベース作りを行った。美術史の分野において、画と賛の総合的研究は、その重要性が指摘されながらも、とくに日本文人画の大成者とされる池大雅(1723-76)・与謝蕪村(1716-84)、および、同時代に江戸でも活躍した中山高陽(1717-80)作品におけるそれについては未だ基礎研究が十分ではなかった。 本研究により、大雅、蕪村作品については、既に刊行された文献をベースに題画文学のデータベースを作成、特に重要な作品については作品調査を実施した。また大雅、蕪村に比べて基礎研究がたちおくれている中山高陽については、画賛のあるなしに関わらず、全貌をつかむための作品の実地調査、基礎文献の調査、粉本調査を実施した。 研究期間中に論文発表はできなかったが大雅は、珍しい画題や賛であっても、狩野派にもある画題とそれに伴う賛が記される場合が多く、版本で流布していたであろう漢詩などからとった賛が多い。これに比して蕪村は、例えば「移石動雲根」など、同時代や前後の時代を見回しても、類例のない画題や題画詩が記された事例が散見される。また、中山高陽については一方で真景図についての自画賛が作品数の割合から考えると量があるが、総じて言えることは、故事人物において珍しい画題が多い。また、同じように自画賛の作品が多いといえるかとおもわれる。 本研究の基礎となる資料はほぼ集めることができたが、ひきつづき、地道に画賛と作品をつけあわせてゆくことで、文人画研究の基盤づくりができるものと考える。
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