本研究は、中国の仏教美術において、仏あるいは仏の浄土を"観る"という思想が、造形表現にいかなる影響を及ぼしたのかという問題について、阿弥陀の西方浄土に関わる作例を題材に調査と研究を行った。特に、初唐から北宋の敦煌莫高窟の西方浄土変に描かれた十六観図について『観無量寿経』の記述と照合し、分類と分析を試み、時代ごとの変遷を明らかにするとともに、それらを生み出した思想的・歴史的背景について考察を加えた。その作業の一環として、敦煌莫高窟・ベゼクリク石窟・キジル石窟を対象とした石窟関連資料のデータ整備を行い、「中国石窟データベース」として構築・公開した。また、敦煌の諸作例との比較から、日本に伝来する綴織当麻曼荼羅の図様が経典に厳密に合致している点について、関連する文献資料を収集し、その制作背景の分析を試みた。
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