従来、東アジアの宗教美術研究において室町時代の仏教絵画は研究対象とされる機会が非常に少ない分野であり、その基礎的な調査研究の成果がまとまって公刊されたことはない。 この研究動向に対し本調査研究は、当時の日本文化を先導した政治権力者や有力寺院、具体的には主に足利将軍家が関与して制作・受容された仏教絵画を中心的な対象として取り上げ、考察を行った。さらに、これに影響を与えた宋・元・明時代および高麗時代・朝鮮時代の仏教絵画をも比較対象として視野に入れ、それらの造形的・文化的な意義を、中国・朝鮮を含めた東アジアの宗教美術のなかに位置付けた。
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