本研究の目的は、モーションキャプチャ技術を用いて舞踊の質を定量化して評価するために物理量を元にした指標を作りその有効性を探ることである。本年度は、コンテンポラリーダンスのダンサー3組のオリジナルの舞踊をモーションキャプチャを用いて計測し、昨年度までに収録したモーションキャプチャデータとあわせて解析作業を進めた。研究の成果は国際学会で発表し、また論文も発表した。具体的には、昨年度作成した4つの質評価指標を使って様々な動作を分析するとと共に、質評価指標と質評価指標の元になった物理量データとの連携によって動作を分析する方法を検討し、質評価指標を起点としながら適宜物理量を参照することで、効率的な動作の特徴の把握が可能になった。この方法は特に同じ動作の比較に有効である。まず各動作の質評価指標同士の相関をカラーマップによってグラフィカルに表示することで、どの動作(群)が他の動作と異なるのかの把握と類似動作のグループ化が容易になった。次に、各動作の質評価指標をレーダーグラフに出力し、それを読み取ることで動作の特徴が時間的なのか空間的なのか身体の特定の部位の使い方にあるのかを把握する。最後に適宜必要な物理量のグラフを出力することで各動作の特徴の把握が可能となる。人間の他者動作の知覚・認識、特に舞踊動作の認識に方法は非常に複雑かつ多様であり、未だ解明されていないことが多い。こうした状況において、人間の知覚・認識の方法を代替するアルゴリズムを作ることは困難であり、モーションキャプチャを用いた舞踊動作の研究においては、データと動きそのものとの人間による発見的な手続きが不可欠である。本研究で示した方法は発見的手続きを効率化する有効な手段であり、データの蓄積によって目的に応じた効率化、より良い指標のための基準の明確化が期待できる。
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