平成20年度は、研究計画に従い浅草オペラ全般に関する基礎資料の所蔵状況と、浅草オペラ団「オペラ座」の地方公演に関する調査を、3回の出張で行った。研究出張で公演の詳細が判明したもののうち、『椿姫』の検閲台本二種類(大正8年東京、大正10年兵庫・京都公演)の詳細な分析を行った。その結果、先行研究では不明とされることが多かった、西洋のオリジナル作品から浅草オペラへの脚色・改訂部分を明らかにした。また『椿姫』の場合は、オリジナルのオペラに比べて台詞、演技などの演劇的要素が多数追加されており、当時の観客が浅草オペラに対して音楽性だけでなく演劇性においても高い関心を示していたことが分かった。この『椿姫』を用いた分析については、早稲田大学演劇博物館・グローバルCOEプログラム「演劇・映像の国際的教育研究拠点」の西洋演劇コースで研究発表「ローシー・オペラと浅草オペラ、その<連続>と<断絶>-小松耕輔訳『椿姫』を中心に-」(平成21年2月24日、於 : 早稲田大学)を行うと共に、研究論文「歌劇『椿姫(La Traviata)』検閲台本にみる浅草オペラの演劇性」(『演劇映像学2008』第2集、平成21年3月15日発行)として発表した。 また本研究で使用する新資料に関して『読売新聞』夕刊(5月9日付)紙上で「『浅草オペラ』質の証明」と題して報道がなされ、解説コメントを行った。同報道はインターネット版(「『浅草オペラ』は大衆芸能にあらず」YOMIURI ONLINE、5月9日)、英字新聞("Discovery sheds new light on Asakusa opera"THE DAILY YOMIURI、5月12日付)でも報道され、資料の価値と本研究の意義を広く伝えることができた。さらに、国際浅草学プロジェクトの一般公開企画「浅草オペラの世界」(明治大学・台東区共催、11月9日、於 : 明治大学)にて、講演「浅草オペラの想像力-オペラ的でないオペラの魅力-」と関連パネル展示を担当し、新資料の価値と研究の意義、重要性を具体的な視聴覚資料を用いて説明し、国内外への情報発信に努めた。
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