研究概要 |
平成23年度は、研究テーマ「近代都市と天使絵図の諸相:1920-30年代ドイツにおける、精神史としての絵画史」について、これまでの研究成果の一部(フィリップ・オットー・ルンゲの作品,『DieZeiten(一日の諸時間)』の分析)を、学会(国際修辞・コミュニケーションフォーラム、於・札幌大学、2011年10月29日)および雑誌(札幌大学文化学部紀要『比較文化論争』)等で発表し、今後の研究で補足すべき事柄や方向性について、貴重な指摘を多方面から得た。また平成23年度の研究テーマである、現代社会における都市と天使像については、ヴィム・ヴェンダース監督の、1987年に公開された映画『Der Himmel ober Berlin(邦題:天使の詩)』を研究対象として取り上げ、公開当時の先行研究、および近年に発表された欧米での研究成果(作家ペーター・ハントケとの関係性など)を渉猟し、作品分析の手がかりとした。ヴェンダースの映画に登場する天使たちが、作家リルケや画家パウル・クレーの天使といった、近代の天使像から着想を得つつも、作品の随所でキリスト教の伝統的な図像イメージが繰り返されること、子どもとの親和性、モノクロとカラーの使い分け、ベルリンという実在する都市の歴史と、映画というフィクションの二重構造のなかで、天使が愛を通じて、一人の人間として再生する意義について、等を考察した。この研究成果については、平成24年度には関連する学会で発表したい。
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