西国を中心とした観音巡礼開創縁起の形成について、本年度は資料収集を中心として調査・研究活動をすすめた。 文献資料の収集については、2008年1月におこなった仏教文学会における発表「西国三十三所開創縁起と性空蘇生譚」を基礎としながら、国文学研究資料館を中心とした文献調査をおこなった。西国三十三所・坂東三十三所・秩父三十四所に関する近世の巡礼案内書および、関連する伝承をおさめる談義本等を中心として資料を収集し、主要な資料の収集は終了したといえる。 文献資料の整理については、秩父巡礼の開創縁起は前年度に「秩父三十四所巡礼開創縁起の形成」(『説話伝承学』16、2008年)として研究を発表し、ほぼ文献収集・資料の整理は終了していたが、本年度の補足調査によって完了した。坂東・西国巡礼の開創伝承については、現在整理をすすめている。 現地調査については、特徴的な西国巡礼の開創縁起を持つ松尾寺の現地踏査をおこない、現地の図書館において文献調査をおこなった。また、伝承によっては巡礼の開創者とされる性空・花山院の伝承について、巡礼と関連があるとみられる山口県光市・高知県須崎市・高知県土佐市の伝承地を現地踏査し、現地の図書館・資料館において文献調査をおこなった。加えて、当該地において性空や花山院に関連する寺社において調査をおこない、縁起資料等の収集活動をおこない大きな成果をおさめることができた。 研究の公表については、上記の調査の過程で発見された資料及び聞き取りをおこなうことができた伝承の報告を2編作成した。
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