本研究には3本の柱がある。(A)『本朝孝子伝』における仏教批判と古典の再評価に関する考察、(B)『本朝孝子伝』の作者・藤井懶斎の伝記研究、(C)『本朝孝子伝』の注釈作業、である。また加えて応用研究として「大名と孝子伝」というテーマを設定している。このうち本年度は(A)『本朝孝子伝』における仏教批判と古典の再評価に関する考察および(B)『本朝孝子伝』の作者・藤井懶斎の伝記研究での業績があった。 (A)『本朝孝子伝』における仏教批判と古典の再評価に関する考察では、『本朝孝子伝』の古典を扱う章段の特色について、他の孝子伝と比較を行い、その成果として学会発表「日本における代表的孝子の形成」(2011.10.1日本近世文学会)を行った。 (B)藤井懶斎の伝記研究は、82歳から没するまでを「藤井懶斎年譜稿(五)」として発表した。今回も彼についての新出書簡など、新見を多く盛り込んでいる。これで5回に渡る連載を終わり、彼の生涯のすべてに渡る調査を完遂した。 (C)については最終部「今世」部の調査を終え、『本朝孝子伝』全編の註釈作業を終えた。ただしまた雑誌発表は行っていない。今後学術雑誌へ連載の形で掲載して大方の批正を乞い、いずれは著書の形で公にできればと考えている。
|