研究概要 |
1. 19世紀のはじめから南北戦争後までのアメリカにおける極東及び南島に関する言及のある文献(書籍及び雑誌記事)を収集し、テーマに分けて整理し、特に植民地主義的観点から、極東の政治的、歴史的、美学的意義について考察した。 (1) Melville's Orienda(Dorothee Metlitsky Finkelstein)、American Hieroglyphics(John T. Irwin)、American Palestine(Hilton Obenzinger)などを含む、19世紀アメリカ文学とオリエンタリズムを論じた基本的な文献を読み直しつつ、新たな文献を購入して読み進め、南北戦争後までのアメリカにおける東洋表象についての考察を深めた。 (2) 夏季長期休暇を利用して、19世紀の文献及びメルヴィル関連の文献が特に充実しているハーバード大学附属図書館(Houghton Library, Widener Library, Pusey Library)及びUCLA、UCR附属図書館にて文献収集をした。特に、19世紀の主要な雑誌である、Harper's New Monthly Magazine, Putnam's Monthly Magazine, Democratic Review, Southern Literary Messenger, Yale Literary Magazine等の雑誌記事のほとんどにアクセスでき、当時の極東や南東への関心の実態を知ることができたのは大きな成果であった。 (3) コーネル大学及びミシガン大学によるMaking of Americaのウェブサイトより、19世紀アメリカの文献の検索を行い、極東・南島に関する文献を読み、テーマごとに整理した。また、ここ1年ほどで急速にGoogle Bookにより19世紀の貴重な文献の検索が可能になったことが分かり、いくつかの文献をダウンロードして読み進めた。 2. メルヴィルの全作品を対象に、極東及び南島への言及を比喩的なものも含めて見つけ出し、分類してリストを作った。上記の同時代の文献に表象される極東・南島とメルヴィルによるそれを比較検討し、メルヴィルとオリエンタリズムについての大枠をまとめた。 3. 1と2の研究成果の一部を、雑誌論文"Mimicking Black, Fashioning White : The Spectacular of Slavery in "Benito Cereno"として投稿し、また学会発表「『レッドバーン』における若きメルヴィルの創造」も行った。
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