近年、西洋文明主導によって大陸で展開されたとされる近代(モダニズム)の特質は、アジア諸文化の地政学的利点や海域ネットワークが果たした役割の重要性が指摘されることによって、再検討が迫られている。本研究では、これまで蓄積した研究代表者の研究成果を踏まえつつ、そのような近代性めぐって進行中の議論を、アメリカ文学・文化研究の場に導入したいと考える。特に、20世紀アメリカにおける海環境をめぐる文学作品を「海辺」「海上」「海中」に分類し、それぞれのサブジャンルに現れる特徴を明らかにすると同時に、20世紀アメリカ文化や思想の中で海環境や陸環境がどのように意識され、表現されたのかを中心的課題とするものである。陸地中心の価値観に基づいてこれまでのアメリカ文学作品研究がなされてきたという前提で、その陸環境偏重の傾向を「ジオセントリズム」とし、その実態を分析した。
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