研究概要 |
本研は、モダニズムの再考察、有機体社会論の再考察という二つの潮流を踏まえ、モダニズム/モダニティの観点を用いながら1970年代演劇の位置付けを見直す作業の先鞭をつけることを、その最終的な目的とする。その際、以下の二つの観点を軸に研究を進めていく。1. 本研究では、有機体社会論、モダニズム/モダニティ論の見直しという潮流を踏まえた上で、演劇理論の構築作業を進行させる。また、1970年代演劇を記述するにあたり、狭義の年代記述だけではなく「長い1970年代」という区分の有効性も吟味すべく、前後の年代も滴宜視野に入れていくものとする。2. 1の観点を軸に研究を進めていくうえで、本研究が主たる考察対象とするのは、D・ヘア(1947~)及びD・エドガー(1948~)による作品とその上演とたるが、二人に影饗を与えた演劇人・理論家(例えば、R. Wiiliams, J. McGrath)などについても、必要に応じて調査・研究を行い、ヘア、エドガー両者の研究の精緻化を図る。上記の目標を達成するため、理論化作業と上演分析に必要となる関連文献の収集、精査を前年度に引き続き行った。この理論化作業の基礎となるのは、2008年に公表したレイモンド・ウィリアムズの演劇論をめぐる論考だが、この続編を、収集した文献の精読を通してさらに発展させ公表することができた。さらに、これらの演劇論をめぐる考察のうち、とくにアクションをめぐる問題について、シンポジウム報告を行い、貴重な示唆を得ることができた。これらの演劇理論構築作業を踏まえることで、平成22年度にその公表を期しているヘアとエドガーを主とする上演分析作業の円滑化が期待できる。
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