研究課題/領域番号 |
20720075
|
研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
池田 寛子 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (90336917)
|
キーワード | アイルランド文学 / アイルランド語 |
研究概要 |
本研究は、20世紀アイルランドを中心にマイナー文学としてのアイルランド語文学と、高い評価を得てきたアイルランドの英語文学の相関関係を追及しつつ、アイルランド語文学の立場から英語文学を照射する可能性を探る試みである。アイルランドの歴史や社会の状況と、アイルランド語文学の伝統を踏まえた上で、アイルランドの作家たちの作品を新しい角度から読み込むことを目的としている。 これまでの研究の最大の成果として、『イェイツとアイリッシュ・フォークロアの世界-物語と歴史の交わるところ』の完成が挙げられる。英語で執筆した博士論文を日本語で書き直し、加筆を施す作業がようやく終わり、2011年11月に出版することができた。「アイルランド語文学と英語文学の相関関係」を目的とした本研究に基づき、アイルランドのノーベル賞詩人イェイツとアイルランド語の関係、アイルランド文学を考える上での「アイルランド語」や「ナショナリズム」の重要性、アイルランド語起源の言葉から見えてくるものについて考察を深め、これを分かりやすい形でまとめ、加筆することができた。本書はアイルランド語の世界と英語の世界の接点を探る試みの一環としても位置づけられ、アイルランド語文化の存在意義を見極めることによってアイルランド人のアイデンティティとは何かを掘り下げようとする試みでもある。 2012年6月の中国四国イギリス・ロマン派学会のシンポジウム「アイルランド文学とアイルランド語の伝統」では司会構成を務める。このシンポジウムでは「アイルランド文学とアイルランド語の伝統」をテーマに、アイルランドにおけるアイデンティティと言語の関係、二つの言語の断絶と交わり、英語文学とアイルランド語文学の相関関係、こういった問題を深く精密に考えるための視座と手がかりを提案する予定である。このことを目的として、今までの研究成果を最大限生かす構成と内容を練った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画はほぼ達成された。昨年度注文したThe Crane Bag Book of Irish Studies 1977-1981が書店の手違いで到着がかなり遅れたため、これを通読する作業が予定していたほど進んでいなかったが、現在遅れを取り戻しつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
古期アイルランド語文学の読解は困難であるが、二十世紀アイルランドにおける英語文学とアイルランド語文学の相関関係を探るためには、二十世紀に入ってからの古期アイルランド語文学の英訳の検討が必須である。そのため、疑問点は早急にアイルランドと日本の古期アイルランド語の専門家に問い合わせ、解決することが重要である。
|