3年間の研究企画の2年目にあたる平成21年度は研究発表に主眼を置き、日本映像学会、Inter-Asia Cultural Typhoon、 International Convention of Asian Scholars、Society for Cinema and Media Studiesなど国内外の映画研究/カルチュラル・スタディーズ学会にて研究発表を行った。 「モキュメンタリー」をめぐる動向に注目することにより、近年の虚構と非虚構との境界線に対する意識がドキュメンタリー表現に対してどのような形で表れているのかを具体例に即しつつ検討した。米国カリフォルニア大学バークレー校メディア・リソース・センター「モキュメンタリー・コレクション」のリストなどを参照し、モキュメンタリー表現の歴史を展望した。このリストは、「架空の人物や団体、虚構の事件や出来事に基づいて作られるドキュメンタリーの表現様式」を取り入れた、広い意味での「モキュメンタリー」映画を扱っている。近年の「モキュメンタリー」の試みについて分析する営みは、同時に映画史を「モキュメンタリー」の視点から再検討することにも繋がってくるのではないか。擬似ドキュメンタリーとしてのモキュメンタリーの源流を歴史的に遡りつつ、今現在のモキュメンタリーがどのような形で展開されているかを幅広く概観してみることにより、モキュメンタリー表現の特質に迫ることを目指した。 当研究企画の最終年度となる平成22年度は、引き続き、「リアリティTVの歴史的展開と各国別比較」、「モキュメンタリー史」、「セルフ・カメラの導入がドキュメンタリー映像表現に与える影響について」、「リアリティTV時代におけるアイデンティティ探求/実存主義との関連性」について、各種学会の学術雑誌などに、論文の形で成果発表をすることに力点を置く。
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