21年度は18世紀末から19世紀初頭にかけて活躍したニューイングランドの女性作家キャサリン・マリア・セジウィックを中心にユニテリアニズムの女性への浸透を調査・研究した。8月にアメリカ・マサチューセッツ州ウースターにあるAmerican Antiquarian Societyでの資料収集によって、セジウィック以外にキリスト教の布教のためのパンフレットや宗教的内容の小説を発表する女性作家を発見することが可能となった。それらの作家を文学史的に位置づけるかを考察する中、すでに研究をすすめていた同時代作家であるリディア・マリア・チャイルド、またユニテリアン論争の中心人物となったハナ・アダムズに関する再考も迫られることになった。その結果、ハーバードを中心としたユニテリアン派とイェール大学を中心としたカルヴァン派の間でかわされたユニテリアン論争におけるアダムズの位置と、女性歴史家としてのアダムズの文化的戦略を再度考察し、英語論文を執筆した。この論文は21年度中には発表することがかなわなかったが、22年度中に査読付きの学術雑誌に投稿する予定にしている。またセジウィックと交流があり、カルヴァン派の宗教教育に懐疑的であったチャイルドは、ピューリタニズムが神権政治を行っていた植民地時代において嫌悪の対象となっていたネイティヴ・アメリカンという人種的他者との人種的混淆を肯定した人物であるが、同時代のトランセンデンタル思想(ユニテリアニズムの一派)を代表する男性作家ヘンリー・ソローのインディアン観と比較することで、19世紀前半の思想観を考察した発表を行い、その後論文を執筆し掲載が決定している(21年度内の刊行予定が遅れている模様)。セジウィックの研究については、ハーバードがユニテリアン派にむかうきっかけとなった時代に執筆された短編"Mary Hollis"についての論考を考案中であり、22年度中に口頭発表か論文執筆のかたちで成果を報告する。
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