平成24年度は、本研究の最終年度であり、これまでの研究を再度検証しつつ、東海岸の女性文化という枠組みの中に位置づける作業を中心に行った。本研究の一年目、二年目、三年目で中心的に扱ったハナ・アダムズ、キャサリン・マリア・セジウィック、リディア・マリア・チャイルド、エリザベス・ケイディ・スタントンという18世紀末から19世紀末にかけて活躍した女性作家たちが、正統派とよばれるオーソドックスなカルヴィニズムとは異なる宗教的立場をいかにしてとりえたかを考察した。また、研究の途中では、本研究のテーマにとって重要な作家のひとりとして、エライザ・バックミンスター・リーを取り入れることにより、一般的に北米スピリチュアリズムの発端とされる1848年のフォックス姉妹によるスピリチュアリズムの流行と女性の宗教観を関連づける考察を行うことが可能となった。 本年度は、ハナ・アダムズに関する英語論文が学術雑誌POETICAに掲載された。また日本トウェイン協会において、トウェインとチャイルドの教育についての発表をおこない、また日本アメリカ文学会東京支部シンポジウムでの発表において、アン・ハチンソン再評価が19世紀半ばに複数の作家によって行われたことについて、ユニテリアン論争の余波として考察する発表をおこなった。また植民地時代から19世紀にかけてのアメリカでの女性の社会的地位をめぐる考察を含む、現代女性作家ジョイス・キャロル・オーツに関する論文の原稿を提出し、論文集に収録される予定となっている。また、2013年6月にはイタリア・フィレンツェで開催される間大西洋女性作家会議にて、リディア・マリア・チャイルドの作品とスピリチュアリズムおよび科学技術についての口頭発表が予定されている。
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