研究概要 |
本年度は、日本におけるワイルド受容史を俯瞰するために、初期の受容に顕著な貢献をした島村抱月によるワイルド劇の受容を中心として調査研究を行った。また、日本と英語圏諸国におけるワイルドの受容状況についても比較研究を進めた。更に、原作の分析も進めるべく、戯曲を中心としたワイルドの作品研究も行った。それと同時に、年間を通して国内外のワイルド研究や演劇研究の動向を確認すべく関連資料の調査研究を行った。このように受容研究と作品研究を同時に進めることにより、日本の演劇界や文学界への考察を深めるのみならず、日本において受容が立ち遅れていたワイルドの喜劇作品の再評価も行うことができた。 研究成果は国際学会での研究発表及び共著での論文発表により公表した。具体的には、7月26日から30日までアイルランドのNational University of Ireland, Maynoothで開催されたThe International Association for the Study of Irish Literatures (IASIL)の第34回国際会議、"Irish Literatures and Culture : New and Old Knowledges"□において口頭発表を行った。発表タイトルは"Japanese Transfigurations of Salome"であり、特に日本に於ける『サロメ』の初期の公演と最新の公演の比較対照を中心として、日本に於ける『サロメ』の受容に見られる変貌とその意味を考察した。また、共著『女性・演劇・比較文化』(丸橋良雄編、英光社、2010年)において単著論文「愛の交錯-ワイルド喜劇を巡る愛-」(PP.160-171)を発表し、多様な愛の有り様が複雑に連鎖して展開するワイルド喜劇の作品研究を行った。
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