平成21年度も、アンリ・ベルクソン(Henri Bergson)の哲学がキャサリン・マンスフィールド(Katherine Mansfield)の文学に与えた影響を中心的なテーマとして研究活動を進めた。平成20年度にロンドンで開かれたマンスフィールドの国際学会に参加して以来、海外の研究者とのつながりが広がり、研究成果の発表の機会にも恵まれた。平成21年10月には国際的なものとしては初めてのマンスフィールド専門の学術雑誌Katherine Mansfield Studiesがエディンバラ大学出版より創刊されたが、第1号に論文"Katherine Mansfield and French Philosophy: A Bergsonian Reading of Maata"が掲載された。また、平成22年にイギリスで出版される予定のマンスフィールド専門書の中の一章も担当することになり、平成21年度からその作業を行っている。平成21年度は、1912年から1913年に出版されたマンスフィールドの初期の作品を分析し、マンスフィールドが早い段階から「知性」と「直観」のバランスというベルクソン的なテーマとともに音楽の比喩などのベルクソン的な表現を取り入れていたことを明らかにした。当初は、ヴァージニア・ウルフ(Virginia Woolfの研究も当該年度中に進める予定であったが、前述の研究書の仕事が入ったこともあり、マンスフィールド研究を優先した。
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