本年度は郁達夫における大正文学受容の比較文学研究において、以下のような実績をあげることができた。 (1) 研究成果の発表 : 11. 研究発表に記した論文、「郁達夫におけるワイルドの受容唯美主義と個人主義」を公表することができた。この論文は、大正の日本で留学生活を送り、帰国後作家として活躍した郁達夫が、当時日本で流行していたワイルドの影響をどのように、どういった経路を通して受けたのか明らかにするとともに、大正日本における受容の特色としての、個人主義者としてのワイルド像を浮き彫りにしたものである。郁達夫における大正文学受容について、さらに続稿を準備しており、継続して公表して行きたい。 (2) 書籍の購入 : 本年度は、科学研究費補助金を利用して、郁達夫の大正文学受容と関わる資料や研究書を購入することができた。ことに、『編年体大正文学全集』など大正文学を扱う上で基本となる資料集や、郁達夫が数多くの文章を発表した、一九二〇年代から三〇年代にかけての中国の文学雑誌の復刻を購入できたことは大きい。現在これらの資料や先行研究の分析を順次進めている。 (3) 資料の調査・収集 : 一月に上海図書館で、関係する資料の調査・収集を行ない、中国における大正文学の翻訳や紹介の書籍を多数閲覧できた。上海図書館のみが所蔵する書籍も多く、大きな収穫があった。
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