平成20年度は「統語的に不完全」とされる発話の生成モデルの形式化の模索に多くの時間を割いた。研究実施計画に書いたように、この模索は21年度の前半までは続く予定である。 20年度中に進んだ範囲での形式化は、論文(査読付)として2009年1月にAmorpheme-basedmodel of nonsentential utterance production(形態素に基づいた非文発話生成モデル)という論文として発表した。論文では一階述語論理と語彙概念構造(Lexical Conceptual Structure)という動詞意味論で作られた形式を機械翻訳用に改変したものを命題(構造)の表示に使った。この論文は素描に近いものであり、事実上二種類の命題(構造)の表示形式を使っているので、本年度はこれらの形式の統合と精密化とともに、できれば単純化をも行いたい。また、この論文はデータが少ない。モデルを支持するより多様なデータの収集が必要である。この点、発表のために出席したスウェーデンでの言語学会では他の参加者よりデータの提供を受けられた点で有益であった。 平成20年度の研究成果には記入できなかったが、2009年に図書の一章として出版が決まっている論文を年度中に校了した。
|