申請者の調査対象言語はBantik語とTalaud語である。バンティック語についてはこれまでの調査で得た多くの民話の語りや自然な会話の録音データと、映像データをできるだけ文字データに起こし、記録として完成させるよう努めた。また、談話データの分析を続行し、Bantik語の文章に混入するインドネシア語の語彙がどのようなものであるかの分析を行い、インドネシア語の談話との相違点について考察した。現地調査を平成20年8月に行い、さらなる談話データの収集を行った。また、方向をあらわす表現が多彩であるので、その追跡調査を行い、論文にまとめた。Talaud語に関しては音声・音韻のデータを再度分析しなおし、アクセント体系についての分析を行った。現地調査では、統語論とテンス・アスペクト体系などに関して、深い分析に耐えうるデータの収集を行った。 BantikとTalaudに加え、他の研究者がデータを収集したRatahanと先行文献が多いSangir語の四つのサギル諸語を比較する作業を続行した。また、ミナハサ諸語に関しては文献の収集を終え、次に調査対象とするTonsawan語について、現地で先行調査を行い、調査協力者を確保した。 各言語が話されている地域で、インドネシア語マナド方言と少数民族言語がどのような使用範囲を持っているか、またそれぞれの言語に関するイメージなどを調査し、社会言語学的な考察を行った。 Bantik語とTalaud語話者のそれぞれ50〜60代の男女と、20代〜30代の話者に調査表を記入してもらい、言語使用域および、単語やインドネシア語から民族語への翻訳をお願いし、言語能力をはかった。
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