申請者の調査対象言語はこれまでBantik語とTalaud語の二言語であったが、平成21年度は新たにTonsawang語という、ミナハサ諸語に属する言語の調査に着手した。平成21年7月から8月にかけてインドネシア国北スラウェシ州において現地調査を行った。Bantik語については民話の語りや自然な会話の録音データと、映像データをできるだけ文字データに起こし、アーカイブに載せる言語記録として十分な質と量を確保するよう努めた。また、社会言語学的調査のためのアンケートを行い、Bantik語話者がBantik語とインドネシア語マナド方言をそれぞれどんな言語使用領域で用いているかを調査し、その結果を論文にまとめた。音声に関しては、イントネーションと語単位のアクセントとのかかわりを調べるため、録音を行い、その後分析した。Talaud語に関しては音声・音韻のデータを再度分析しなおし、アクセント体系についての分析を行った。統語論とテンス・アスペクト体系などに関して、深い分析に耐えうるデータの収集を行った。冠婚葬祭時に行われる伝統的なTalaud語によるスピーチ(adat)を採集、書き起こした。社会言語学的調査のアンケートは80人分を採集した。Tonsawang語については、社会言語学的調査アンケートを30人に配布、回収した。言語使用領域についての集計と分析を行った。語彙調査を開始し、500語程度を集め、音声資料も採集した。 研究成果はBantik語のアクセントに関する論文と、Bantik語話者の言語使用領域に関する論文にまとめた。その他に、東京外国語大学におけるインドネシア諸語の記述研究研究会において数回に渡りBantik語とTalaud語について発表した。また、6月に国際オーストロネシア学会において、Bantik語とTalaud語のヴォイス現象を比較した研究発表を行った。11月のインドネシア学会でも発表した。
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