平成22年度の申請者の調査対象言語はBantik語とTalaud語とTonsawang語である。平成22年7月と8月に上記の三言語について現地調査を行った。Bantik語は民話の語り、会話の録音・映像データを収録、書き起こしを行った。また、Bantik語話者の社会言語学的調査を続行し、多量のアンケートを回収し、現在のBantik語話者の言語使用の実態について分析した。Talaud語に関しては談話データを数多く収集し、民話の収集も行った。形態論と統語論については不十分だった箇所を埋めるため、緻密な調査を行った。Talaud語のヴォイスの交替については、深い考察を行い、特にConveyance Voiceとされているヴォイスの多様な用法について発表した。 BantikとTalaudはサギル諸語に属するが、同じくサギル諸語のRatahanとSangir語の研究者と対話を行い、四つのサギル諸語言語の比較を行った。 また、ミナハサ諸語に関しては文献の収集を終え、昨年度にパイロット調査を行ったTonsawan語について、現地で調査協力者の協力を得て基礎語彙と文化的語彙の収集を終了し、音声の分析を開始した。形態論と統語論においても、基礎的なデータの収集を開始した。また、録音・映像データを収集した。来年度以降、本格的な文法事項についての調査を行うための基盤を形成した。 Tonsawang語に関しては社会言語学的調査の先行研究があるが、20年前のものであるため、2010年代の言語使用実態について、インタビュー調査を行い、将来の大規模な社会言語学的調査の基礎データを得た。 これら調査と研究の成果は「インドネシア諸語の記述的研究」研究会および各種の学会でテンス・アスペクトやヴォイス、社会言語学的調査結果について発表を行った。
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