研究課題
14世紀末から15世紀初頭に成立した『ラドネシのセルギー伝』と『ペルミのステファン伝』における双数形の用法に関する研究を進めた。本年度の研究の特徴は写本を使用したことにある。「ラドネシのセルギー伝」は写本を使用することでこれまで刊行されていなかった箇所も分析可能となり、(1)15世紀初頭にエピファニイによって書かれたオリジナルが伝存するとされる箇所、(2)作者の問題が最終的な解決を見ていない箇所、(3)15世紀中葉にパホーミイによって書かれた死後の奇蹟と、3種類の出自の異なる箇所を比較・検討することでこの時代の双数形の用法の共通性、多様性を明らかにすることができた。また、(2)の箇所に関しては、作者をパホーミイとする研究者もいるが、双数形の用法をみる限り断定するのは難しく、現段階ではエピファニイの創作準備段階の原稿を反映している可能性も否めない点を明らかにした。これらの研究成果を2010年3月にモスクワ国立大学で開催された学会で報告した。また、『セルギー伝』にその萌芽が見られる双数形の談話的用法と、それがより顕著な形で現れる17世紀末の文献「貴族夫人モローゾヴァの物語』を比較することで、モスクワ・ルーシ時代の双数形の用法の変遷のアウトラインを浮き彫りにし、その成果を2009年11月に淡江大學での招待公演で発表した。『ペルミのステファン伝』に関しては、モスクワの歴史博物館で写本調査をし、データの精度をより高めた。現在、これらの調査結果をふまえ、学術雑誌「学術的解明におけるロシア語」(ヴィノグラード記念ロシア語研究所)への投稿論文をまとめている最中である。
すべて 2010 2009
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Русский язык : исторические судьбы и современность.IV международный конгресс иссдедователей русского языка.Труды и материалы
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