本年度は最終年度であるため、テキストと語彙を整理して、これまでの調査で不足な点をまず洗い出した。その結果、主にドム"2"方言のデータが必要であると考え、8月31から9月22日にかけて行なった現地調査ではドム"2"方言の話される地域に入った。ニューギニア航空のKundiawa直行便が運航を取りやめているため往路Goroka経由、復路Mt Hagen経由となった。調査ではこれまでのデータを補う形で動植物・伝統行事に関する語彙・談話収集を行なった。発話はMarantz PMD660(録音機)+AKG C1000S(マイク)で録音、重要なものについては話者と協力しながら書き起こした。写真による記録も行った。 基盤研究(B)#20320065(研究代表者大西正幸)の研究活動との連携により、シンブー諸方言の語彙と比較考察することでこれまで知られていなかったドム語の語源が多く明らかになった。 収集した語彙と談話データにより、ドム語の語の音韻・形態的特徴、および意味単位としての語彙項目の特徴について成果を英文でまとめている。複数の語からなる語彙項目について特に注目したものである。意味的に非常に特異な語、稀薄な語彙的意味しか持たない語が、形態・統語的に独立の単位として振る舞う例を示し、ドム語の類型的な特徴として位置付けたものである。 2月に成果の一部をオランダのVU University、およびポーランドのAdam Mickiewicz Universityで口頭発表した。論文も準備中である。
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