平成20年度に収集したバリ語山地方言の基礎語彙資料を分析・整備し、その成果を「バリ語山地方言語彙資料」として発表した(11.を参照)。この資料は、バリ語山地方言の音韻構造と語彙特徴を平地方言と対比しながら提示した上で、バリ語山地方言の語彙の約1000項目を音素表記で示しており、バリ語山地方言の構造的特徴を解明し記述するという本研究の目的の1つを達成する上で、重要な基盤となる。 また、平成20年度の現地調査中に行った、国家語インドネシア語を話すことができるバリ語山地方言話者とバリ語平地方言話者の二言語話者を対象とした聴覚音声学的実験の結果について、2つのバリ語方言の音韻構造の差異を注目することによって解釈を試み、その内容を日本音声学会で口頭発表し、さらに論文として投稿した(11.を参照)。バリ語方言間の音韻構造の違いと聴覚の相互関係を明らかにしたこれら2つの研究成果は、バリ語方言研究に新たな知見をもたらすことができたと言える。 さらに、研究代表者の所属部局に外国人研究員として約2ヶ月滞在したバリ語研究者(ウダヤナ大学・教授、I Gusti Made Sutjaja)と、バリ語研究について議論を重ね、本研究の調査実施に関して有益な情報とコメントを得た。また、本研究と密接な関係をもつバリ語辞書のデータベース作成についても議論・計画し、作業を開始した。このプロジェクトには、バリ語山地方言に関する本研究の成果が大きく反映されている。
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