平成20年~22年に収集したバリ語山地方言の語彙資料に基づき、音韻構造と語彙におけるバリ語平地方言との比較を行いながら、山地方言の構造的特徴を明らかにするための基盤となるデータベースを整備した。平成24年3月に約10日間インドネシア・バリ州で現地調査を実施し、山地方言地域であるプダワ村で引き続き語彙調査を行った。 平成22年に行ったプダワ村におけるバリ語山地方言話者への社会言語学的な面談調査の結果を主なデータとし、山地方言地域の社会言語学的状況(バリ語山地方言・平地方言・インドネシア語の領域や話し相手による使い分けなど)に関する考察を行った。平成24年3月の現地調査で、補足的な事実確認を行った。 本研究課題の目的の1つであるバリ言語社会の解明にとって非常に重要な論考を3本発表した。まず、バリ言語社会において特徴的な現象であるバリ語とインドネシア語のコード混在について統語構造、談話構造、敬語使用などの観点から多面的に考察した、単著『インドネシア・バリ社会における二言語使用』(13.を参照、科学研究費補助金[研究成果公開促進費]による)である。2つめは、バリ語とインドネシア語のコード混在現象が起きるメカニズムについて敬語使用とバリ社会の変化に注目することによって新たに解釈を提案した、"Language and Social Hierarchy:Interaction between Balinese-Ihdonesian Codemixing and the Use of Balinese Honorifics"である。3つめは、これまでのバリ語に関する政策を、主にバリ語会議、州条例、バリ語教育から考察することによって、バリ言語社会を支える重要な側面である公的・法的な側面を明らかにした「バリ語の政策の変遷と今後の可能性」(13.を参照)である。 また、本研究課題を含むこれまで私が行ってきたバリ語研究およびバリ社会言語学研究とその重要性について、国際セミナーで発表した(13.を参照)。
|