本研究は、バリ語方言研究にとって極めて本質的であるにも関わらず、四半世紀もの間十分な調査がなされていなかったバリ語山地方言を対象に、言語学的・社会言語学的調査研究を実施する。主な研究トピックは以下の3つである。 (1)現在のバリ語山地方言の方言学的に重要な構造的特徴を、主に語彙調査を通じて、もう1つの方言であるバリ語平地方言と対照しながら、明らかにする。 (2)山地方言地域の社会言語学的実態の諸側面(使用言語、言語態度など)を、面談調査に基づき、解明し、記述する。 (3)言語構造と社会構造の相互作用に関わる言語現象であるコードスイッチングに注目し、バリ語平地方言とインドネシア語のコードスイッチングのメカニズムに関してすでに私自身が提案している仮説の有効性を、バリ語山地方言話者による会話資料を用いて、この方言の特徴をふまえた視点から検証する。
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