研究課題
本研究は、動的統語論(Dynamic Syntax)を用いて主に日本語の統語構造と意味表示を導出し、動的意味論(Dynamic Semantics)の枠組みを用いて意味を解釈する一連の動的モデルを構築することである。本年度は、まず日本語を扱う際の動的統語論の理論細部の定式化を行った。具体的には、動的統語論において解析状態を変化させる規則として語彙規則と推移規則が存在するが、推移規則はどの時点でどの推移規則が適用されるかが定式化されていなかった。本年度の研究では、日本語を解析する際の最適な推移規則適用アルゴリズムを提案し、Prologによる実装を行った。日本語では複文の場合、名詞句が主節の要素なのか従属節内の要素なのか一意に決定できない場合があり、本システムは考えられうる複数の解釈を導出することができる。これは、動的統語論のマージ規則を利用している。本研究の内容は日本語以外のヘッド・ファイナル言語への応用の可能性も示唆される。8月には形式意味論の最新の知見を得るためにESSLLI2008に参加し、動的統語論の研究に関してロンドン大学のKempson教授とディスカッションを行った。さちに(第一階述語論理式をモデル上で解釈するシステムをPrologを用いて開発した。意味論上興味深い現象して、遊離数量詞や副詞表現の生起位置によって意味が化するデータを収集し分析した。遊離数量詞と前提(presupposition)との関係をメタ変数を使ったマージ規則を使って分析した。現在、動的意味論の枠組みとして談話表示理論(DRT)に基づいた意味表示理論を動的統語論と連動させる方法を模索している。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
New Frontiers in Artificial Intelligence (JSAI2007 Revised Selected Papers, LNAI4914) (LNAI)4914
ページ: 174-186
Proceedings of the Fifth International Workshop on Logic and Engineering of Natural Language Semantics (LENLS2008) 5
ページ: 14-29