研究課題
本研究は、動的統語論(Dynamic Syntax)を用いて主に日本語の統語構造と意味表示を導出する動的モデルを構築することである。本年度は、不定表現の形式をとる数量詞が従属節の中に埋め込まれている環境で、不定詞がとるスコープを観察し、動的統語論に基づいた形式化によって現象を適切に説明することを試みた。具体的には、従属節にある不定詞や関係名詞は主節にある全称量化された数量詞をこえたスコープをとることがあるのと同時に、主節の数量詞の解釈に依存するスコープをとることもある。本研究では、Chierchia(2001)やKempson(2001)に基づき、当該の日本語の不定詞をエプシロン・タームと定義し、スコーレム化された選択関数を用いてモデル理論的に主節の数量詞に依存する解釈をえる意味論的枠組みを提示した。本研究の意味表示は、.動的統語論上で合成的に得られる。スコープの曖昧性は、動的統語論におけるスコープステートメントにより記述される。スコープステートメント内のメタ変数が従属節のレベルのスコープステートメントとユニファイすると主節にある数量詞の解釈に依存する意味が導かれる。主節のレベルでメタ変数のユニフィケーションが行われれば、一番広いスコープが得られる。ポインターを親ノードにあげる規則が適用される際に、どちらかの解釈が得られるかが非決定的に決まる。論理式は最終的にスコーレム標準形に変換される。また、統語的な枠組みとして、動的統語論のかわりに範疇文法を用いた研究成果をLENLS2009にて発表した。
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Proceedings of the Sixth International Workshop on Logic and Engineering of Natural Language Semantics (LENLS2009)
ページ: 59-70
Proceedings of 23rd Pacific Asia Conference on Language, Information and Computation (PACLIC23) Vol.1
ページ: 269-277