研究概要 |
本研究は,合意形成型グループ・ディスカッションにおける合意形成の成り立ちと問題点を談話分析的に解明するものである.参加者自身が合意形成の過程をチェックし,合意内容の妥当性を検証できるようにするための基礎研究として,グループ・ディスカッションの収録ビデオおよびその文字化資料と参加者のアンケートをデータとして,(a)グループでの合意形成の過程,(b)合意内容への個々人の意見や全体での討論の反映度,(c)合意内容に対する参加者の態度および意識を明らかにする.そして,参加者の発言や言語行動から合意形成にあたって起こりうる問題の在処を特定・類型化し,合意形成型グループ・ディスカッション全般への応用可能性を探るものである. 本年度は,実際のディスカッションデータについて,以下の(A),(B)を完了した. (A)収録済みのディスカッションデータの文字起こし,およびアンケート回答の入力を行った. (B)ディスカッションの全体構造の中から「個別討論」段階と「合意に向けた最終検討」段階を分離し,後者へ移行するタイミング,主導者,言語表現などの項目を特定した.また,最終検討段階に見られる,「これまでの議論のまとめ」→「結論案の提示」→「結論案の承認(否認)」→「合意形成」の流れの大まかなパターンをいくつか特定し,それを制御する発話を抽出した. さらに,年度当初の計画には盛り込まれていなかったが,合意を形成する上で欠かせないと考えられる要素・手順を盛り込んだ「議論ステップモデル」を作成し,それにしたがって行われたディスカッションも収録し,文字化した.議論の流れや効率の点で,モデルを使用していないディスカッションと比較・対照することを次年度試みる.
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