研究実施計画に従い、主節に現れる他動詞の主語・目的語、自動詞の主語等の格標示についてデータの収集を行った。奈良時代語の分析では、『萬葉集』『古事記』『日本書紀』『続日本紀宣命』等の調査を、古代琉球方言の分析では、『おもろさうし』の調査を行った。 いずれの場合についても活格性が確認され、一定の成果が得られる見通しはついているが、より厳密なデータの整理や、類型論的な観点からの分析、各言語の特徴づけ等の考察はこれからである。データの整理の際に注意すべき点として、無助詞名詞句の取扱いがあげられ、これに関連して述語と隣接するかどうかや、文頭に現れるかどうか等の観点を導入する必要がある。 現代の熊本方言話者、特に老年層の格標示の使い分けにおいて、活格性が認められるようである。この方言でのあり方も含め、今後日本語に活格性が認められることを確かめ、その性質を詳しく記述していきたいと考える。
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