1、前年度に引き続き、資料収集を行った。具体的には、(1)上司小剣による関西弁小説の収集(2)曾我廼家五郎による脚本の収集(3)その他の近代関西弁資料および研究書の収集である。ただし(2)については本年度に入って国会図書館近代デジタルライブラリーによる電子化テキスト(無償)が入手できるようになったため、これらの資料収集にかかる費用を他の関西弁資料の収集に充当した。また、資料収集が予想外に順調に進んだため、収集のための出張旅費をパソコン周辺機器(スキャナ、プリンタ、PCMレコーダなど)の購入費用に充て、資料の電子化および分析を進めた。また、資料収集の過程で得られた成果の一部を次年度、学術論文「対照表形式の近世後期上方語彙資料」として公刊する予定である(埼玉大学国語教育論叢13)。 2、1で収集した資料の口語資料としての資料性について、否定表現形式のあり方から分析した。その成果のひとつとして、平成21年度近代語学会で口頭発表を行った(題名:「明治大正期関西弁資料としての上司小剣作品群の紹介および否定表現形式を用いた資料性の検討」)。なお、その際、SP盤文字化資料における否定表現形式との比較検討を行い、学界に有益な知見を提供した。ちなみにこの研究発表の成果は『近代語研究第15集』(平成22年11月刊行予定)に学術論文として掲載される予定である。 本年度も極めて順調に研究が進んだ。補助金の支給に深甚の謝意を表する。
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