研究概要 |
本研究の目的は、現代日本語において「壁にペンキを塗る/壁をペンキで塗る」のような格体制の交替現象が生じる仕組みを明らかにすることである。昨年度(平成20年度)の研究では、「壁塗り代換」と呼ばれる交替現象を分析した。そして、交替の仕組みを説明するには、動詞の範疇的語義に階層を考え、従来考えられていたよりも下位の階層において交替動詞の意味特徴を抽出するアプローチが有効であるという結論を導いた。 この成果をうけ、本年度(平成21年度)は、動詞の意味の階層性に着目する本研究のアプローチが、他のタイプの交替現象にも有効であるかを検討した,、その結果、このアプローチは、「桜の葉に餅をくるむ/餅を桜の葉でくるむ」のような、壁塗り代換とは交替パターンの異なる交替(「餅くるみ交替」)にも有効であることが明らかになった。 以上のように、動詞の範疇的語義に階層を考え、「格体制が決定される階層」「交替の可否が決定される階層」「交替パターンが決定される階層」の各階層を区別することで、交替の仕組み(交替を起こす動詞と起こさない動詞の違いや、動詞による交替パターンの違い)が説明できるようになったといえる。 以上の成果を、「壁塗り代換を起こす動詞と起こさない動詞-交替の可否を決定する意味階層の存在-」という論文にまとめ、日本語学会学会誌『日本語の研究』第5巻4号(『国語学』通巻239号)(2009年10月1日発行)に発表した。
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