中世から近世にかけて編纂された漢和辞書群に就いて日本語史の資料性を明らかにすることを主たる目的とする。その目的ために、近世漢和辞書について所蔵調査等を通して代表的な諸本を決定し、その記載内容を比較検討しようとするものである。また、中世の『倭玉篇』諸本の展開を踏まえた上で、本研究によってもたらされた近世の『倭玉篇』・漢籍和刻附訓字書・画引き字書類の系譜の結論から、近代に成立した漢和辞書の前史が明らかになるものと予想している。先行研究に見られる近世漢和辞書の所蔵情報を確認する予定でいたが、本年度初めに新たに2点の先行研究が明らかとなった。そのため、それらの先行研究で使用されている資料を確認したところ、『江戸時代流通字引大集成』に採録されている諸本も大きな位置を占めることがわかり、その中の代表的な資料も取り上げるべきであることが明らかとなった。また、近世初期『倭玉篇』の和訓を考察するために、近世極初期に位置する『慶長十五年版』類を取り上げて、和訓考察の方法を検討し、『慶長十五年版』の和訓がどのように位置づけられるかを検討した。さらに、『慶長十五年版』とは別系統である近世初期の漢籍辞書『大広益会玉篇』が和刻本として片仮名和訓を持つことになり、漢和辞書としての位置づけを得たのではないかと推定し、その和訓についてもどのように位置づけられるかを検討した。以上の考察については、いずれも現在投稿をすべく準備中である。
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