研究概要 |
本研究では,日本語話者が移住する地域で移住者が持ち込んだ方言が接触することで形成された接触方言(コイネ)の特性を,北海道とサハリンで形成された接触方言(それぞれ,北海道方言,樺太方言)を例に,考察する。本研究では,両接触方言が形成された時期から現在にいたるまでの間に生じた言語変容をめぐる異同を明らかにすることをめざす。具体的には (1)北海道方言・樺太方言が形成された時期の言語生活に関する記述から当時の両方言の社会言語学的状況を記述する視点, (2)現時点での北海道方言・樺太方言の特徴を,現地調査から捉える視点,を設ける。この二つの視点から,樺太方言・北海道方言の言語変容に見られる関係を整理するのが,本研究の目的である。今年度は3年計画の1年次目である。今年度に実施した調査は以下の通り。 I.文献調査 北海道大学付属図書館で,戦前の樺太における言語生活に関する情報収集を行った(6月・7月)。その中でも,樺太引揚者によって作成された樺太方言語彙集の収集を行った。同様の作業を東京都に所在する全国樺太連盟の事務室でも実施した。 II.面接調査 北海道札幌市(7月),稚内市(3月)に実施した。札幌市での調査は,北星学園大学に通う学生20名と樺太からの引揚者(2名)が対象となった。調査では自然談話の収集とアクセント,および音声項目に関する面接調査を実施した。稚内市での調査では,札幌市での調査と同じ内容の調査を,樺太引揚者を対象に実施した。 I
|