本年は申請年度一年目ということもあり、特にデータ収集とその整理、及び研究の方向性ということに重きをおいた。まず、7月にシドニー大学で行われた具格に関するワークショップを中心に言語学の講習会に参加し、類型論研究の流れを確認した。次に9月に2週間アラスカ大学に出張し、ネイティブスピーカーからエスキモー語のデータを収集した。データを採集・分析する中で相互行為における物の移動・やり取りが日本語とエスキモー語比べた場合非常に面白い対比をなすことが分かった。この研究成果をまず国際学会で発表することにし、21年度に開催予定である第11回国際認知言語学会(タイトル : Functions of Indirect Reciprocal Constructions in relations to the Reciprocal-Collective Continuum)及び英国応用言語学会2009(タイトル : Bridging the Gap between Grammar Instruction and Intercultural Communication : Some Applications of Cognitive Linguistics to EFL Classroom)に応募し、どちらも採用された。前者の発表は、英語などヨーロッパ言語に見られない意味(相互構文)の多義性が日本語とエスキモー語には観察され、かつ日本語とエスキモー語とでは逆の文法化の進展を見せるということを実証しようとしたものであり、後者の発表は、そのような言語差をどのように外国語としての英語文法学習に効果的に取り入れるのかを議論するものである。
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