移動表現の複雑さを考察するうちに、主要調査対象言語であるエスキモー語(ユピック)の指示し表現の分析の認知言語学的精緻化が是非必要であり、他言語との多角的対照に優先すべきと考え、本年度は一年間主に、英語とエスキモー語の指示詞に関する調査研究を行った。主な研究成果としては以下の3点が挙げられる。まず、8月に京都言語学コロキュアムの年次大会でそのテーマにそった研究発表を行った。また、研究を継続発展させ、2月に世界的に有名な言語学の学会であるBerkeley Linguistics Society (BLS)で発表することが出来た。また、その発表の内容を論文化しBLSに投稿した(すぐに発表される見込み)。また、年度を跨ぐが、2012年度6月に関西言語学会の年次大会に招聘研究発表として招待を受け、発表する予定である。当初の予定では、中国語、タイ語などより多くの言語との比較に進む予定であったが、研究目標を達成するためにも今年度の重点的な研究は有意義であり、また大きな国際・国内学会でその成果を発表できたことはよかったと考えている。 同時に研究テーマに沿って進めてきた日本語と英語とエスキモー語の「弱い他動性」に関する研究も平行して行った。この成果は、年度を跨ぐが、2012年7月に英国認知言語学会という国際学会での研究発表に採択されている。この学会も発表後の査読論文掲載があり、そこでの掲載を目的に研究発表に応募した。 最後に、調査で得たエスキモーに関する知識を中学校教員向けの冊子にエッセイとして掲載したり(2本)、札幌大学で認知言語学の学校外国語教育への応用について講演したり、積極的な社会還元も意識して行った(もちろん、本務校では授業に加えて外国語教育のセミナーを行うなどの取り組みをした)
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