研究概要 |
平成20年度は, 機能の特化を示す構文の一例として, 英語の中間構文に関する研究を行った。中間構文は, 主語の恒常的な特性を表す総称的な構文であり, 特定の出来事を表さないといわれている。だがその一方, 中間構文が特定の出来事を表す場合があるという指摘もある。これらの観察から, 中間構文は, 「総称タイプ」と「出来事タイプ」に分類でき, 「総称性」の観点からは意味的自然類を成さないことが分かる。昨年度の研究では, 上述の一見矛盾するように思われる事実を統一的に捉える方法を考察した。具体的には, Kuroda(1972)に倣い, categorical judgmentとthetic judgmentの区分を応用し, 中間構文をcategorical文と見なすことを提案した。そして, この提案が, 総称タイプと出来事タイプの中間構文を意味的自然類として捉えられること, さらに, 当該構文が示すいくつかの生産的・非生産的側面を原理的に説明できることを示した。この研究成果は, 日本英語学会第26回大会(2008年11月, 筑波大学)で口頭発表し, さらに『JELS 26』(2009年3月, 日本英語学会)で論文として発表した。 上述の成果は, 以下の二つの意味合いを持つ。(1)一見多様に映る中間構文が, 従来とは異なる角度から眺めると, 機能の特化を示し, 意味的自然類として振る舞う。これは, 構文のサブタイプを複数認め, サブタイプ間に共通する特質を必ずしも求めない「家族的類似性」に基づくカテゴリー観との対比で興味深い帰結である。(2)現時点では未解決であるが, 中間構文が英語の文法体系において形式的に有標(破格)であるということが示せた場合, 当該構文は, 形式の有標性と機能の特化の関連を主張する本研究の立場を支持する現象となる可能性がある。
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