研究課題
若手研究(B)
(1)本研究課題の目的中国語を母語とする日本語学習者の長母音習得過程を知覚と産出の両面から明らかにすることが本研究課題の目的である。同じモーラ数でも音節構造が異なる場合の長母音の習得状況を検討し、学習者の習得の実態に現状よりも合致した音声教育プログラムを考案することを目指している。(2)本研究課題の内容母語に関わらず日本語学習者の母音の長短の混同が知覚・産出両面で観察されており、中国語母語話者も例外ではない。この現象は語の知識不足に起因するという考えもあるが、学習者に内在する母音の長短の知覚カテゴリーが不明確であることや、知覚カテゴリーに対応するよう母音の長さを制御して発話することが難しいという、より深いレベルの問題とも関係があると思われる。したがって、学習者に見られる母音の長短混同に関しては、知覚能力と産出能力との関連性を検討する必要があるが、両能力を同時に扱った研究は管見の限り多くはない。さらに、これまでの研究では、調査語の環境が限られていることもあり、学習者が日本語長母音を習得していく過程には、未だ不明な点が多い。そこで、本研究では以下の3点について検討を行っている。(1)語の音節構造が長母音産出に与える影響4モーラ語で長母音が含まれる様々な音節構造の語の発話傾向を鹿島・橋本(2000)に基づく日本語のリズム単位により分析し、音節構造が中国語母語話者の日本語発話に与える影響を検討する。(2)語の音節構造が母音の範疇知覚に与える影響(1)と同様の語を利用して、一語中の長母音の長さを様々に変えた複数の刺激語を作成し、中国語を母語とする話者に対する知覚実験を行う。得られた結果より、母音の長短判断に関連が深いとされる範疇知覚の程度を分析する。(3)長母音産出と母音の範疇知覚化との関連性長母音の産出傾向と母音の長短の範疇知覚の程度を照らし合わせ、中国語母語話者における母音長の知覚能力と産出能力との関係を考察する。
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21世紀アジア学会紀要』第9号, 国士舘大学21世紀アジア学会 印刷中