平成21年度は、平成20年度末に行った、ベトナム語・日本語バイリンガルインタビュー調査の分析を行った(在日ベトナム系児童1年生8名、6年生9名、及び、比較対象として同学年の日本人児童7名分)。本研究の焦点である「日本語能力と母語能力の関係(口頭能力に限定)」については、次のようなことがわかった。まず、日本生まれのベトナム系児童にとって、優位言語は明らかに日本語である。また、小学校生活6年間を日本語のみで過ごしたベトナム系の子どもたちも、ある程度のベトナム語を維持していることがわかった。ただし、ベトナム語については、かなりの個人差が見られた。ベトナム語能力が高い子どもは、幼児期にベトナム語で絵本を読む経験があったり、家庭において親とはベトナム語を使い続けていたりするなど、ベトナム語の習得・保持のために親からの働きかけがある子どもたちである。 子どもたちの日本語能力については、1年生を中心に分析を行った。(両言語に対応できるレベルのタスクにしたため、6年生の日本語タスクでは、天井効果が出てしまったためである。)その結果、1年生の日本語能力とベトナム語能力には、強い関係性があることがわかった。日本語能力が低いと判定された子どもたちについて、日本語のどんな部分(語彙、文法、談話構成能力など)が不得手なのかについては、現在、分析を進めているところである。
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