本研究では、日・タイ両言語の薬学用語を語種や語構成などの観点から分析し、日・タイ語の薬学用語にどの程度の重なりがあるのかや、それぞれの言語の薬学用語の特徴を明らかにすることが目的である。平成21年度は「1.薬学用語のデータベース化」および「2.薬学分野の研究者に対する聞き取り調査とそのまとめ」を行った。以下、それぞれの内容について詳しく述べる。 1. 薬学用語のデータベース化 平成20年度から継続して、日本語、タイ語、英語の薬学用語のデータベース化を進め、データベースが完成した。 2. 薬学分野の研究者に対する聞き取り調査 教育・研究の各場合における使用言語について、平成20年度にタイの8つの高等教育機関で薬学教育・研究に携わる研究者に対して行った聞き取り調査の結果をもとめた。日本で薬学分野の研究をするタイ人留学生の多くは、論文執筆や口頭発表ではあまり日本語を使用していないが、日本人学生のゼミ発表を聞く、講義に出席して内容を理解するなどの場面では日本語の使用率が高く、研究室というコミュニティの一員として、アカデミックな活動に参加するには、ある程度の日本語能力が必要であることが示唆された。また、彼らの多くが、日本語の薬学系専門用語に関して困難を感じていたこともわかった。21年度にも同様の調査を継続し、プリンスオブソンクラー大学、ナレースワン大学等、計4機関で聞き取り調査を実施した。 平成22年度は、まず聞き取り調査の結果を前年度分と合わせてまとめる。そして、完成した薬学用語のデータベースをもとに、日・タイ両言語の薬学用語の分析を行い、その特徴を記述する。それと同時に、そのデータベースをもとにして、日タイ英の三言語による薬学用語辞典を開発する予定である。
|