本研究は、日本語とタイ語の薬学用語を語種や語構成などの観点から分析し、日・タイ語の薬学用語にどの程度の重なりがあるのかや、それぞれの言語の薬学用語の特徴を明らかにすること、そして日・タイ・英語の薬学用語集を開発することを目的として行ったものである。平成22年度は以下の研究を行った。 1.日・タイ語の薬学用語の特徴の記述 日・タイ語の薬学用語を語種や用語制定のアプローチの観点から比較し、両者の特徴を記述した。まず、語種については、日本語の薬学用語は多くが漢語語彙のみで構成され、一部に外来語や混種語も見られるが、和語はほとんど使われていないことを明らかにした。一方、タイ語の薬学用語は、純タイ語またはサンスクリット語やパーリ語からの借用語のみで構成されるもの、あるいはそれらを組み合わせたものが多いことを明らかにした。日本語の用語には和語がほとんど用いられていないのに対し、タイ語の用語には純タイ語の語彙も比較的多く用いられており、できる限りタイ語固有の語彙を用いて学術用語を制定しようとする国の政策がうかがえる。次に、日・タイ語とも分野を問わず、西洋の学問の概念を翻訳して新たに作られた学術用語が多く存在するが、薬学用語制定の際のアプローチに注目してみると、両言語とも音よりも意味を重視して翻訳し、用語が制定されていることがわかった。 2.日・タイ・英語薬学用語データベースのまとめ 平成21年度に作成した日・英・タイ語薬学用語データベースのタイ語のデータを精査し、語種や表記の点で一般的に用いられているタイ語の薬学用語と合致しているかどうかを確認した。 今後は、このデータベースをもとにして、さらに詳しく日・タイ両言語の薬学用語を分析していく予定である。また、このデータベースを利用した日・タイ・英語薬学用語集を作成し、電子媒体で関係機関に配布することを計画している。
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