研究概要 |
地域の日本語教室あるいは外国人支援活動団体において, 支援者として活動している外国人(以下, 「外国人支援者」)を対象に, 聞き取り調査と実際の支援活動の調査をおこなった。調査協力者は, 関東・関西・中国地区の外国人支援者計8名である。聞き取り調査では, 各調査協力者の来日前から現在までの個人史を聞いた。支援活動の調査では, 各調査協力者の通常の支援活動の様子を録音した(可能な場合は録画もおこなった)。これらの調査データを文字化し, 大まかな分析をおこなった。 聞き取り調査から明らかになったことは, 長く日本に滞在するかれらは, 自身の経験を解釈し「語りうるもの」としているということ, 新たに日本で生活する人たちに, 自分の経験を少しでも役立てたいという動機から, 現在の支援活動に関わっているということ, さらにそれによって自身と周りの環境を少しずつでも変えていきたいと考えているということである。 支援活動の調査から明らかになったことは, 学習者と同じ経験をしたかれらだからこそできる支援があり, それは母語を使用することや体験談を交えること, 項目の提示順序を変えるといった具体的方法だけでなく, かれらが支援者として存在すること自体が, ロールモデルとなって現在の学習者の精神的支えとなっているということである。 今後は, 聞き取り調査のデータをコード化して要素を抽出して各調査協力者のライフストーリーを再構成する。さらに, 全員のデータを統合してカテゴリー分析をおこない, 共通した「語り」の類型を提示する。支援活動調査のデータは会話分析をおこない, 援助された活動の種類とその機能, 母語使用による援助や問主観性の構築, 支援者と学習者の関係性などを明らかにしていく。以上の分析から, 外国人支援者の活動実態およびその意義を明らかにし, 地域の日本語学習支援およびその他の外国人支援活動のあり方を問い直す一助としたい。
|