研究概要 |
地域日本語教室等において支援者として活動している外国出身者を対象に,昨年度おこなった聞き取り調査と学習支援活動の記録をもとに,今年度はそれらのデータの分析をおこない,考察を加えた。 聞き取り調査をもとにしたかれらのライフストーリーからは,他者との関係が構築され,「居場所」ができることや「目標」が設定されることが,「ことば」の問題を乗り越えたり,自主的な「学び」に向かっていくのに重要であることがわかった。またかれらのアイデンティティは,そういった他者との関係や生活世界の広がりの中で形成され変化している。したがってかれらが支援活動の意義として考えるのは,参加者が仲間を見つけ,学びあえる「居場所」になること,自ら学びたいものを選びとる「自律性」を尊重する場であることである。また当事者であったかれらが支援活動に関わることの意義は,同じ経験を共有できることと,新しく来日した人にとっての「ロールモデル」になれること,経験から得たことを多数派側や次世代を担う子どもたちに伝えていくことであった。 実際の支援活動を分析した結果,学習者と同じ母語を持つ支援者による活動の特徴として,(1)詳細な説明,(2)学習者の言語使用環境に合った説明・提示,(3)学習者からの「適切さ」に関する質問,(4)日本語に関する学習者の自己認識と支援者からのアドバイス,(5)学習者の直面する問題の吐露と支援者からのアドバイス,の5点が見出された。学習者と共通の言語を介さない場合であっても,支援者が日本で生活しながら日本語を身につけてきた経験が生かされており,学習者の既有知識や潜在的言語能力の尊重,学習者の言語使用環境や必要性に即した学習項目の提示となって現れていた。 このように当事者であった視点を活かしロールモデルとなれる外国人支援者がさらに増え,日本語母語話者支援者と共に活動を作っていくことが必要不可欠であることを提言した。
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