研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、1920年代後半~1950年ごろまでの書記資料の収集を行った。この時期には邦字新聞、雑誌、文芸誌、また、ブラジルで初めての日本人子弟のための日本語教科書『日本語読本』が刊行されるなど、ブラジルで発刊された書記資料が豊富にあるが、とりわけ戦前の資料は劣化がひどく、書記資料の整理・保存に加え、資料の電子メディア化およびデータベース化を早急に行う必要があると思われた。また、口述資料の収集に関しては、ブラジル南東部サンパウロ州および南部パラナ州の戦前日系移住地を中心に、この時期に学齢期を迎えた1世子供移民と2世を対象に行った。研究成果の一部は、国際交流基金サンパウロ日本文化センター日本語セミナーにて「日本国内および海外日系社会の日本語におけるアクセントの継承と変容」(於:Fundacao Japao, Sao Paulo, Brasil, 2009年9月19日)をテーマに、また、慶應義塾大学言語政策研究会にて「ブラジル日系・沖縄系移民社会における言語接触」(於:慶應義塾大学,2009年12月22日)をテーマに発表を行った。 昨年度と同様、資料収集に際しては、ブラジル南東部サンパウロ州のほか、北部アマゾン地域へ赴いたが、本年度は戦後移住者もかなり多く居住するサンパウロ州内の移住地と、戦後ブラジル国内からの移住者により新しく形成されつつある日系人集住地であるブラジル最北のRoraima州Boa Vista市、および、ブラジル国外であるが、その大半が戦後移住者で構成されるパラグアイの日系集団移住地にも赴いた。南米の日本語教育について論じる際には、とかく戦前移住の視点から論じられることが多かったが、むしろ今後は戦後移住へと重点をシフトし、歴史的社会的地理的背景を異にするそれぞれの地域における日系社会との関わりの中で論じていく必要性のあることが明らかになった。
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