(1)例文作成、(2)例文からの情報収集(例文分析)、(3)例文情報の言語化、(4)例文情報から言語特徴への抽象化という四点から、日本語分析技術をストラテジーから捉え直し、その関係を示すストラテジーマップを作成した。特に、平成20年度は(1)と(2)の下位項目化と細分化を進め、「具体的な例文」の作成と、その例文から情報を得るストラテジーの記述を進めた。具体的には、文節数・複文構造・会話文という3点に焦点を当て例文を具体化するストラテジーと、例文の情景を言語化して明らかにするストラテジーである。 (1)の成果を基に、ストラテジートルーニング教材の作成を進めた。第一は、例文作成から言語特徴分析までのストラテジーを対象に系統的指導を行う教材である。従来作成してきた試作版教材を基盤に、内容的不備や問題点を解決して教材化を進めた。第二に、例文作成と例文分析の関連付けを強めるため、例文の具体性に着目して例文作成ストラテジーを指導する教材の作成を試みた。教材はMicrosoft社のPowerPointで作成して情報機器で提示し、指導者の介在を要しない形で指導できるものである。そして、非日本語教師の短期大学生に調査を行い、スライド使用や指導前後の類義語分析行動を観察して教材の有用性とユーザビリティを探った。第一の教材は、例文作成行動と例文分析行動は活発化したが、言語特徴分析への連動が十分促せなかった。第二の教材は、情報量の多い例文の作成を促せる一方で、ストラテジー使用で増える例文構成要素に質的な差が目立った。
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