研究概要 |
平成21年度は、「音読力」には学習者のどのような技能が反映されているかという研究課題に焦点をあて、特に「音読力」との関連が期待される「音韻的作動記憶」の測定課題の開発に取り組んだ。 調査1ではは、日本人英語学習者を対象にした母語による(日本語版)測定課題の開発を行った。まずは、五十音のうち清音をランダムに組み合わせて三文字の無意味綴り(非単語)を複数個作成し、連想価が高いものは除外するなどの手続きを経て、最終的に使用する非単語を決定した。その後、非単語は2語~8語の範囲内で組み合わされ、二語課題から八語課題まで用意された。この課題では、学習者は、音声化・録音された一連の非単語を聞いて、筆記再生するよう求められた。結果はスパン得点により算出された。一方、第二言語(英語)による音韻的作動記憶を測定する課題は、Service(1992;Service & Kohonen,1995;結果は正答数により算出)及びCheung(1996;結果はスパン得点により算出)を使用した。大学生29名にこれらの課題を実施した結果、日本語版課題については、第一に、一語課題を作成することの必要性、第二に、五語課題以上の再生はその難易度ゆえ、事実上、実施することが困難であることなどの問題点が示された。第二言語での課題については、Cheungの課題は学習者にとって非常に難しかったため実施困難であることが、他方、Serviceの課題は難易度も適当であったが十分な信頼性があるとは言えないこと(α=.600;20項目)が示された。 調査2では、さらに各測定課題の改訂を行ない(例:筆記再生課題から復唱課題に変更、項目数の増加)、日本語版課題(改訂版)とthe Children's Test of Nonword Repetition(Gathercole & Baddeley,1996によるもので、すでに標準化されている)の2種類を用意して、日本人大学生英語学習者25人に対して実施した。その結果、日本語版課題と第二言語による課題との間には、中程度の相関関係がみられ(r=.545,p<.01)、最低限の並存的妥当性があることが示された。
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