研究概要 |
本研究は小学校外国語(英語)活動における児童の不安と学習意欲や不安への対処傾向との関係を探るとともに,いかなる教師からの支援が児童の安心した学びに有効であるかを検討することを目的としている。本年度は以下の研究を実施した。 1)平成21年度2月~3月に1,497名の小学校5年生および6年生を対象に実施した質問紙調査の結果を分析した。主な結果として,外国語活動時に不安を強く感じる傾向にある児童は学習意欲は高く,また人前で答えが分からなくなるような不安生起場面においても前向きに対処しようという気持ちが強いことが明らかになった。しかしながら,同時に,高不安群は実際の不安生起場面では,回避等のネガティブな行動をとりがちであることも明らかになり,前向きに取り組みたい気持ちと実際の場面では後向きの行動をとってしまうという複雑な心理状況にあることが分かった。 2)5名の現職小学校教員へのインタビュー調査を行った。そこでは,外国語活動では学習の先行きが分かりにくく,また「テストで得点をとる」という児童にとって分かりやすい達成感を感じる場面がないため,いかに達成感を感じさせる場面を作っていけるかが重要であることが指摘された。また,不安感を軽減する為には,日本語によって「分かる」ことも必要ではないかという意見が出された。 3)初等教育教員養成課程に在籍する3年次生および4年次生123名を対象に,自身が経験した英語学習特有の不安要素とそれを和らげる学級の雰囲気について質問紙調査を実施した。その結果,最も大きな不安要因は英語の発音で,たとえ綴りを読んで理解できていても発音が合っているかの不安がつきまとうことが示された。それを軽減する学級の雰囲気としては,誤りを受け入れる雰囲気があることと,同時に周りが無反応ではなく,反応を示してくれることが安心につながるとの意見が多く出された。
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