研究概要 |
研究2年目である平成21年度においては、擬似初心者の特徴を明確にするために、より英語習熟度が高い学習者と比較分析を行った。研究では、9名の大学生(擬似初心者レベル4名、lower-intermediate(以下「LI」)レベル2名、上級レベル3名)を対象に多読を半年間実施し、読書量および多読を通した語彙習得に焦点を当てて調査を行った。 半年間における読書量の平均語数を習熟度別にみると、擬似初心者が29,914語、LIレベル学習者が30,074語、上級レベル学習者が187,207語であり、擬似初心者・LIレベル学習者と上級レベル学習者の間に大きな開きが見られ、擬似初心者は他のどのグループよりも読書量が限定されていた。また、多読を通した語彙習得に関しても、擬似初心者は他グループよりも成果が限定的であることが確認された。調査ではまず、多読図書テキストの中から任意に抽出された45の英単語について多読開始前と後に和訳テストを行った。その結果、多読を通して頻度の高い単語の方が低い単語よりも習得される確率が高いことが示唆されたが、その傾向は習熟度が高い学生に顕著であり、擬似初心者の単語習得は頻度にかかわらず成果が低いことがわかった。さらに、対象学習者の自己記録データを基に、多読を通して学習者が自発的に習得した未知語についても分析を行った。ほとんどの学習者が多読図書の中から自発的な未知語の学習を行っており、多読における語彙習得の有効性が示唆された。しかし、学習した未知語の数、多読終了後の定着数ともに習熟度が高い学生の方が高く、擬似初心者は多読終了時点において学習した未知語がほとんど定着していないことが明らかになった。 以上のことから、擬似初心者を対象とした多読指導では、モチベーション向上には効果が期待される一方、多読のみによる語彙習得に関しては効果が限定的であることが示唆された。
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